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大阪高等裁判所 平成11年(ラ)906号 決定

主文

一  原決定を取り消す。

二  本件を神戸地方裁判所に差し戻す。

理由

第一抗告の趣旨及び理由等

一  抗告の趣旨及び予備的申立ての趣旨

抗告の趣旨は、「仮処分命令申立ての却下決定に対する即時抗告状」の「抗告の趣旨」記載のとおりであり、予備的申立ての趣旨は、「一九九九年一二月一〇日付け主張書面」の「第二 申立の趣旨の予備的追加」の「一」記載のとおりであるから、これを引用する。

二  抗告の理由及び予備的申立ての理由

抗告の理由は、「仮処分命令申立ての却下決定に対する即時抗告状」の「抗告の理由」、「一九九九年一一月二六日付け主張書面」及び「一九九九年一二月一〇日付け主張書面」の「第一 ごみ集積場の設置者は誰か-本件集積場の設置、廃止等の権限が相手方にあることについて-」記載のとおりであり、予備的申立の理由は、「一九九九年一二月一〇日付け主張書面」の「第二 申立の趣旨の予備的追加」の「二」記載のとおりであるから、これを引用する。

第二抗告の趣旨及び理由に対する答弁

「答弁書」、「平成一一年一一月一九日付け主張書面」及び「平成一二年一月六日付け主張書面」記載のとおりであるから、これを引用する。

第三事案の概要

次のとおり補正するほかは、原決定が「第二 事案の概要」に記載するとおりであるから、これを引用する。

一  原決定二頁末行の「主張して、」の後に「主位的に、」を加え、同三頁一、二行目の「求めている事案である。」を「求めるとともに、当審において、予備的に、神戸市が本件集積場を廃止することについて同意するよう求めた事案である。」と改める。

二  同三頁七行目の「本件建物」を「原決定の別紙物件目録記載の建物(本件建物)」と改める。

三  同六頁一行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「1 当事者適格について

神戸市は、ごみ集積場の設置・移転・廃止については地元住民に委ねており、自治会、町内会、管理組合等何らかの自治組織のある地域では当該自治組織の決定に従うことを表明しており、本件集積場の廃止(移転)についても、相手方が本多聞二丁目地区を包括する自治組織であると認知した上、相手方の同意を要求している。

したがって、本件集積場の設置・移転・廃止を決定する権限は相手方にあるものというべきであるから、相手方には当事者適格がある。」

四  同六頁二行目の「1 被保全権利について」を「2 被保全権利について」と改める。

五  同七頁八行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「 また、仮に、相手方に本件集積場の廃止等の権限がないとしても、神戸市は、再三、相手方の同意があれば本件集積場を廃止する旨を表明しており、相手方の同意のないことが本件集積場の廃止の障害となっているから、相手方には、本件集積場の廃止に同意すべき義務がある。」

六  同七頁九行目の「2 保全の必要性について」を「3 保全の必要性について」と改める。

七  同一〇頁八行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「(三) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律六条の二第一項が市町村の一般廃棄物の収集、運搬の義務を定め、神戸市の廃棄物の適正処理、再利用及び環境美化に関する条例三条も神戸市に廃棄物の処理に努める義務を定めていること、神戸市がごみ集積場の設置基準として、<1>交通の支障がないこと、<2>収集車が走行できる道路に面していること、<3>収集作業の安全が確保されていること、<4>概ね一〇〇世帯に一箇所であることを定めていること等からすると、ごみ集積場の設置・移転・廃止の権限は神戸市にあると考えるべきである。

また、神戸市においては、ごみ集積場の設置・移転・廃止についての地域住民の話し合いの結果を管轄事業所に申し出る扱いになっているが(甲二六)、このことは神戸市が地域住民の要望を尊重することによって地域住民との対立・摩擦を避けようとしているにすぎず、神戸市が地域住民の話し合いの結果に拘束されるわけではないから、右申出は、神戸市に集積場の設置・移転・廃止を決定することを促すにすぎないものである。

したがって、神戸市がごみ集積場の設置について地域住民の同意を要件とする取り扱いをしているからといって、相手方にごみ集積場の設置・移転・廃止を決定したり、同意したりする権限があるということにはならない。」

八  同一〇頁九、一〇行目を次のとおり改める。

「(四) したがって、相手方には、抗告人に対する侵害行為はないし、本件集積場の廃止等に同意する権限もないから、抗告人の仮処分申立ては、予備的申立てを含めて、被保全権利はなく、保全の必要性もない。」

九  同一一頁三行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「3 仮に、相手方に本件集積場の廃止権限がないとした場合、相手方には神戸市が本件集積場を廃止することについて同意する義務があるか。」

一〇  同一一頁四行目の「3 保全の必要性」を次のとおり改める。

「4 保全の必要性

抗告人には、相手方に対し、本件集積場の廃止等を求める保全の必要性、あるいは、神戸市が本件集積場を廃止することについての同意を求める保全の必要性があるか。」

第四争点に対する判断

一  争点1(ごみ集積場の設置・廃止権限)について

1  争いのない事実のほか、疎明資料(甲一一ないし一三、二五、二六、三六ないし三九、乙一七、一九、二五)によれば、次の事実を一応認めることができる。

(一) 神戸市におけるごみの収集等に関しては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律のほか、神戸市廃棄物の適正処理、再利用及び環境美化に関する条例(甲一一)、神戸市廃棄物の適正処理、再利用及び環境美化に関する規則(甲一二)及び神戸市の一般廃棄物処理計画(神戸市告示第一四〇号、甲一三)等が定められているが、ごみ集積場の設置・移転・廃止等については、そのいずれにも具体的な規定が置かれていない。

しかし、神戸市は、ごみ収集は神戸市と地域住民(市民)との役割分担によって行うものであり、決まった収集日にごみ集積場に出されたごみを収集するのは神戸市の役割であるが、ごみ集積場の位置を決定したり、その維持管理を行うのは地域住民の役割であると考えている。

そして、実際にも、神戸市は、ごみ集積場の設置・移転・廃止については、地域住民の話し合いにより決定してもらうとの立場を取っており、右話し合いについての格別の手順は定められていないものの、自治会・町内会や管理組合等何らかの自治組織が存在する地域において当該自治組織がごみ集積場の設置・移転・廃止を決定した場合には(自治組織がない地域においても、持出区域内の世帯間における何らかの方法による合意の形成が図られている。)、区ごとに設置されている管轄の環境事業所にこれを申し出ることを要請しており、かつ、右申出があった場合には、右申出にかかるごみ集積場の設置場所が、収集・運搬の効率性、安全性、町の美観上の観点等から、<1>交通の支障がないこと、<2>収集車が走行できる道路に面していること、<3>収集作業の安全が確保されていること、<4>荒ごみについては概ね一〇〇世帯に一箇所であることという四つの要素を考慮して相当でないと認められる場合を除き、右申出にかかる設置場所をそのまま神戸市がごみ収集を行う場所として取り扱っている。

(二) 本件集積場は、本多聞二丁目地区内に四箇所ある荒ごみ集積場の一つであり、現在、本多聞二丁目地区内の約八五世帯が利用している。

本件集積場は昭和六〇年二月ころに増設されたものであるが、本件集積場が現在の場所に設置された経緯等は明らかではない。しかし、神戸市がごみ集積場の設置及び維持管理等は地域住民の役割であると考えていることからすれば、本件集積場は、相手方の当時の役員等がその設置を決定した可能性が高い。

(三) 神戸市は、既に設置されているごみ集積場を廃止(あるいは移転)する場合についても、自治組織が存在する地域においては地元自治会の同意が必要であるとの立場であり、本件集積場の廃止・移転についても相手方の決定に従う旨を表明している。

(四) なお、神戸市は、平成一〇年五月初めころ、本件集積場を廃止し移設することになったため、同月八日の荒ごみ収集が本件集積場の最後の収集となる旨のビラ(甲三六参照)を本件集積場利用所帯に配布するとともに、本件集積場に同趣旨の看板を設置したことがあるが、神戸市が右のような措置を取ったのは、相手方の前年度役員が本件集積場の廃止に同意していることが前提となっていたものであり、その後、相手方が本件集積場の廃止は移転場所が同時に決定されない限り応じられないとの立場を表明したことから、神戸市は、本件集積場の廃止はできないとして、本件集積場をそのまま存続させている。

2  以上の事実によれば、本件集積場は、相手方がその設置を決定した上、神戸市に右設置場所での荒ごみ収集を申し出たものと認めるのが相当であって、神戸市が相手方からの要望に基づいてその設置を実質的に決定したものということはできない。

したがって、本件仮処分申立てについては相手方には当事者適格があるものというべきである。

二  ところで、抗告人の仮処分申立ては、本件集積場が設置されていることに伴う騒音等によって、抗告人がてんかん発作を起こし、生命に危険を及ぼす被害を受けていることを理由として、相手方に対し、主位的には、本件集積場を廃止すること等を求め、予備的には、神戸市が本件集積場を廃止することについて同意するよう求めるというものであるところ、一件記録によれば、原決定は、相手方に当事者適格がないことを理由として抗告人からの仮処分申立てを却下しており、仮処分申立て自体の当否については審理されていないことが明らかであるから、本件については、当審において追加された予備的申立ての当否を含め、抗告人が主張している被保全権利の存否(特に、相手方が神戸市の提案している場所に本件集積場を移転せず、そのまま存続させている行為によって、抗告人が受忍限度を超える被害を受けているかどうか)及び保全の必要性の有無を改めて原裁判所に審理させるのが相当である。

三  よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松尾政行 裁判官 熊谷絢子 裁判官 亀田廣美)

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